
■視線は動く
縦書きの文章ならば視線は文字を追うように上から下、右から左へと動きます。
では漫画のような絵の場合はどうなんでしょう?ぱっと画面を見て、まずは一番大きな顔を見ますよね。基本的には画面を占める比率の大きな絵であったり、コントラストのはっきりした部分を画面の中で印象の強い部分と捉えて、それらの部分を追うように視線を彷徨わせます。では、同程度の強さの絵があったときはどの順番で見ていくのでしょう。

■視線を動かす
一枚絵と比べたとき、漫画にはコマ割という時間の前後を示す区切りがあるために、より絵の中の視線をコントロールする必要があります。まぁ、漫画を読んだ事のある人ならまず読み方を大きくはずすことはないですが、それでも変形ゴマや横長コマに縦並びのふたコマをあわせたときなんかは、どの順番で読むのかを指示する必要があります。昔の漫画ではコマごとに数字を振ってこれを解決したようですが、今となってはネタとしては使うことはあっても見る順番の指定のためではありませんね。矢印を使うというのも手としてはありますが、本当に見難いときや、シャレでやるのはいいかもしれませんが、全コマするものではないと思います。
そんな漫画で視線をコントロールするのが、前回もちょっとふれた視線を誘導するテクニック「視線誘導」です。視線誘導は上手くなればなるほどいくつものテクニックを同時に、無意識に使っていけるようになるのでまずは意識して試してみましょう。
■コマ割で視線を誘導する
えー、のっけは簡単です。
漫画を描いたことのある人には当然のことですが、コマをあまり細々と切ってゆくとなんとなく、1コマ1コマが別々の絵に感じて続いているように感じれなくなってしまうものですよね。もちろんコレを上手く使って細かいコマのそれぞれを独立したコマとしてとらえさせるという見せ方もあるのですが、それはおいおい使ってゆくことにして。まずは基本のコマの置き方をやってみましょう。
その前に、コマ割の基礎知識を確認しておきましょう。コマ割の基本はいつでも3段4段、多くて5段です。この「段」は縦の分割(コミスタで言うと、<枠線定規>→<等間隔で分割>→<横に分割>の分割数)のことです。そして、この段のそれぞれが1コマから3コマくらいに分けられます。つまり、1ページに3コマから15コマくらいのコマが出来上がるわけです、これにいわゆる「見開き」と呼ばれる2ページで1コマとか、1ページ1コマが要所要所にはさまれていくわけです。見開きで考えると最小で1コマ、最大で30コマの間ということになりますね。例えば20ページの作品があったとしたら、使えるコマ数は単純計算で20コマから600コマの間ということになります。まぁ、普通1ページ4〜6コマ位なものなので実際は80〜120コマといったところでしょう。このコマ数の中でストーリーをすべて説明するのですから、出来るだけ無駄を省いていきたいわけですね。そのために画面構成をして視線を誘導するわけですね。
では前置きが長くなりましたけど、基本のコマ割です。

[コマ割り1]
これが一番良く見るコマ割パターンですね。視線は矢印のように動きます。これが少し変わって次の例になるとどうでしょう?

[コマ割り2]
不思議と目に入りにくいコマがありませんか?多分、だいたいの人は[コマ割り2]の4、5コマ目は目を送りにくいので6コマ目を主に見て4、5コマ目はそのついでに流して、下の7、8、9コマ目に目を送ってしまうことと思います。そのときの視線に沿って矢印を入れると次の図のようになります。

[図1]
それに対して[コマ割り1]はこますべてに目がいくと思います。矢印を入れると次の図のように。

[図2]
どうでしょう、比べてみるとはっきりしたのではないでしょうか。このようにコマを割っただけでも、ある程度視線は誘導されてしまう上に、見やすい見ずらいの違いもうまれてしまうわけですね。つまり無理なコマ割をすると、せっかく描いた絵も流されてしまって機能しなくなる可能性があるわけですね。
それはわかったけど、だから何やねん。という感想を持ちましたか?
いや、これがなかなかに重要なんですよね、前回のペン入れの強弱による視線のコントロールを解説しましたし。今後、集中線やトーンを張ることでやはり視線をコントロールする方法を解説してゆくわけなんですが。そのすべてが、まず切ったコマ割とそこにまず入れた絵によっておきる素の視線誘導を修整するための技術なわけなのですね。そこで、まずは素のコマ割が読み手にどんな影響を与えるかを自分で認識することが重要なのです。
といっても、このままではいまいちわかりにくいので、絵を入れてみましょう。
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| [図3] |
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[図4] |
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[図3]は[図2]に、[図4]は[図1]に絵を入れただけです。特に気にしなくてもコマすべてが目に入る[図3]に対して、[図4]は上で書いたとおり4、5コマ目が見ずらいと思います。構成による視線誘導でコレを見やすい状態に直してみましょう。
構成で、といっても視線誘導を応用した簡単修整が目的なので、絵の構図自体を大きくいじったりはしません。4、5コマ目の絵を少しだけずらして、3コマ目のトーンの張り方を変えることで下に落ちていきそうな視線を右斜め下のキャラ横の空間に誘導します。

[図5]
変えた部分はごく少ないけど、最初は他のコマから浮いていた4,5コマ目がページに組み込まれた感じになったでしょ。これがコマの中の絵の動きを利用した視線誘導の修整法です。
気をつけるのは二点。まずページのコマ割自体の作る視線の動きを把握する。次にコマの中に絵を入れたときに出来る視線の動きをコントロールすることでページの視線に沿わせていくということです。でも、影響はそこだけではなく、1、2コマ目も[図4]と[図5]では印象が変わってきます。この印象の違いがダメならば、またちょっと位置をずらして微調整をしてゆくわけですね。
では、次回はアクションなんかでよく使う横長三段3コマのページで絵の入れ方、効果によって変わる画面を眺めてみましょう。


第6回へ続く
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